鳥取の旗を高く掲げよ!
中井一仁


がんばれ、SC鳥取
 平成17年4月3日、SC鳥取の地元開幕戦が、横殴りの冷たい雨の中、ソニー仙台FCを相手に開催された。悪天候にも関わらず東山陸上競技場に集結した熱心なサポーターは九百人を超え、入場者数の発表にサポーターの間で大きな拍手が起きた。その数字は間違いなく自分たちの勝利であるからだ。皆はずぶぬれになりながら熱い声援を送った。
 僕たちはSC鳥取がJFLに参戦したときから応援してきました。東山のみならず松江や鳥取などホームの試合ではレプリカユニフォームを着込んで家内と一緒に応援に出かけます。一度、徳島までアウェイの応援に出かけたことがあります。2千人を超える徳島サポーターの中に二三十人ですが鳥取のサポーターが来ていました。その半分くらいは大学生など鳥取出身で徳島在住の人たちでした。この様な現象はアウェイ各地で見られ、鳥取の応援席はプチ県人会になっています。SC鳥取への応援は自分たちのルーツを確認し合う作業でもあるのです。

地域社会とサッカー
 日本のサッカーが代表人気に引っ張られているのに対し、ヨーロッパのサッカーは自分のふるさとのチームを応援する事から始まっています。これはヨーロッパが都市国家から始まったという歴史によります。実際イタリアが国家として成立したのは19世紀後半であり、イタリアセリエAが熱いのはそういった都市間戦争の歴史があるからです。またイベリア半島もいくつかの王朝が合従連衡して偶然現在の国境があるにすぎません。クラシコと言ってマドリッド(カスティーリャ)とバルセロナ(カタルーニャ)の試合が盛り上がるのもそのためです。日本に目を向けると地方分権が進められ、東京政府から独立した新しい地方の時代が始まろうとしています。そうした中で地域の心の拠り所として、地域へ密着したJリーグチームの存在意義があります。

プロ野球とJリーグ
 4月6日の朝日新聞に「Jリーグに教えて」という記事がありました。プロ野球のロッテ・巨人両球団代表がJリーグを訪れそのシステムを学んだという記事です。僕はこれを読んで隔世の感を抱きました。それというのもJリーグの設立時に読売のW氏とJリーグのK氏との激突が世間を騒がせた事があったからです。W氏は「各クラブの名前に企業の名前を入れる事」、「試合のTV放映権は親会社に与える事」等々、プロ野球システムに準じる主張をしました。時のJリーグは認めませんでした。もし認めていたらJリーグは第二プロ野球になり「読売ヴェルディ」がJリーグの巨人軍になっていたかもしれません。放送される試合は読売だけ、他のクラブは読売の顔色を伺い、新規参入もままならず、チームは企業間で売買され、猫の目のように球団名が変わり、そしてチーム数も現在のように三倍に増えるどころか、逆に減少していたかもしれません。
 野村総合研究所(知的資産創造 Vol.13 No.4 2005)はプロ野球とJリーグの優位性に関する10項目の調査を実施しています。その中でプロ野球が優位だと考えられたのはビジネス性のみで、他の9項目はすべてJリーグが優位です。特に圧倒的にJリーグが優位であるとされた項目は、ビジョンの明確さ、選手や指導者の育成の仕組み、国際性、地域密着性などです。この中のキーワード「地域密着」に関連して使われる野球の「フランチャイズ制」とサッカーの「ホームタウン制」は似て非なるものです。フランチャイズ制は独占興行権を意味する言葉です。球団は市民が自分で作り上げたものではなく「企業が地域に与えた恩恵」という面が強いのです。一方、ホームタウン制は地域の住民でチームを作り支えていこうという理念に基づくものです。

鳥取から世界へ
 SC鳥取は「地域が支え育てる地域コミュニティの核」となるチーム作りを続けていくべきだと思います。ヨーロッパのサッカークラブは市民が主体となって運営され、町の顔でもあります。スペインの名門バルセロナにはソシオと呼ばれる会員組織があり、その人数は10万人を超え収入も30億円になると言います。クラブはこれを基盤にして運営されています。J2の横浜FCも「市民がつくる市民のクラブ」を目標に、母体企業を否定しソシオ制度を中心とした企業の論理に左右されないプロチーム作りをしています。SC鳥取もそのようなクラブをめざすべきでしょう。SC鳥取に足りないもの、それは第1に「勝利」、これに尽きます。その上で第2に地元出身の選手を増やすことが必要でしょう。そのためには地元のユース世代の育成に取り組む必要があります。それが地域のスポーツレベルを上げ、地域への密着度を高める事にも繋がります。
 全国各地でJ参戦を明確に目標に掲げたチームが多くなりました。昨年は徳島と草津がJに上がりました。今年は愛媛がJをめざしています。地域リーグには熊本や長崎など、地域が支援しJリーグ入りをめざすチームが続々と誕生してきています。JFLで一定の条件を満たしたチームはJリーグに上がる資格があります。地域の力を結集すればSC鳥取がJリーグに上がることは決して夢ではありません。サッカーは、草サッカーとJリーグ、アマとプロ、日本と世界の間がシームレスに繋がっています。SC鳥取といえどもチームや選手は、世界のサッカーのヒエラルキー構造に組み込まれています。逆に言えばチームや選手は能力によって世界のピークを目指すことが出来るのです。SC鳥取が進む道の先には世界が広がっています。僕たちは応援を続けます、いつの日か世界に向けて鳥取の旗を高く掲げる日を信じて!