ORCAってなに?
―ORCAは今までのレセコンとここが違う!―


はじめに
8月10日、O編集長からORCAについて最新の情報を書けというメールを頂きました。せっかくの機会ですので、11月6日に開催された石原 謙日医総研研究部長のご講演「オープンソースと説明責任が守るプロフェッショナルフリーダム−開発コードネームORCAの意義と展望−」のお話を下敷きにし、「ORCAが従来のレセコンとどこが違うのか?」という点に的を絞って説明させていただく事にしました。
ORCAとはOnline Repeipt Computer Advantageの略で、その名の通り「常に進化し続けるネットワーク型のレセコン」という意味です。ORCAは日医のプロジェクトのコードネームであり、平成14年3月に正式な名前でリリースされます。

他のレセコンとどこが違うのか?
ORCAには今までのレセコンにはない「三つの大きな特徴」があります。

この三つの特徴について、「それがなにをもたらすのか?」と言う点について少し詳しく説明します。

1.オープンソースプログラムで作られている。
従来のレセコンは各社が独自にプログラミングしたもので、その内容は公開されていません。ですから当然そのなかでどういう処理がなされているかは、ユーザには分かりません。こっそりとメーカには有利でもユーザに不利な処理が入っていても、それはユーザには分からない事になります。また各社が独自のプログラムであるために他の医療機関と情報交換が出来ず、従って医療機関の連携が出来ません。さらに医療機関が自分の財産である患者さんの情報を自由に取り出す事が出来ないと言う問題点があります。

厚労省が作成した介護認定の一次判定ソフトのプログラム内容が国民に公開されず問題になりました。フランスなどEU諸国の多くではすべての公共用コンピュータプログラムはその内容(ソースコード)を明らかにするように法律で義務づけられています。それは国が、国民の知らない間に、国民に不利な事をしないように監視するためです。
以上のような従来のレセコンに対し、ORCAはコンピュータを動かす基本ソフトからその上のアプリケーションソフト、様々な周辺ソフトなどすべてのプログラムがその内容(プログラムソース)を公開したオープンソースプログラムで作られています。しかも無料のプログラムが使われています。

オープンソースプログラムには以下のような利点があります。

ORCAをオープンソースプログラムで提供すると言うことは、医師会・医療機関が情報武装するためのツールを提供すると言うことになります。例えばマイクロソフトのシステムで医療情報システムを作れば、それはビル・ゲイツにすべての医療情報を握られると言うことにもなりますし、また例を変えて厚労省がレセコンを作り医療機関がそれを使えば、厚労省がすべての医療データを握る事になります。オープンソースではそういう事が出来ない仕組みを提供するのです。

私たちは、第三者の管理から国民の医療を守るために、そして医師のプロフェッショナルフリーダムを守るために、オープンソースプログラムで作られたレセコンや電子カルテを使う必要があります。つまりORCAはIT分野で医師のプロフェッショナルフリーダムを守るためのツールになります。言い換えればOSレベルで国民の医療データを守るためです。長い目で見れば、国や保険者などの管理医療から自分たちの医療を守るツールになると言うことです。

視点を変えて、コストダウンと言う観点から見ると、従来350万から500万のレセコンが50万から150万にコストダウンできると予想されます。しかしORCAは今までのレセコンを駆逐するために提供されるのではありません。日本の医療情報産業をつぶすのではなく、無駄な開発を省き、医療情報産業の活性化を図り発展させるためのものなのです。ORCAは、これをベースにして電子カルテなど様々な医療機関情報システムを組み入れる事が出来ます。つまり医療機関内におけるネットワークの中心となります。

2.ネットワークに対応している。
現在、レセコンは法外に高価なスタンドアローンのレセプト打ち出し専用事務機にすぎません。その上、そのデータは会社が違うと互換性がありません。つまりこのままではレセコン会社の枠を越えて医療機関をネットワークでつなぐ事ができないと言う問題があります。これは医療に関する情報交換の共通の基盤・技術が提供されていないと言う事になります。このため現状では患者・医師の医療情報を求めるニーヅへの対応が不十分であり、これからの医療人が一番求められている患者さんへの説明責任が果たせないと言うことになります。

 これに対し、ORCAは情報交換の共通の基盤を提供する事になるので、医療機関同士を結ぶ標準の医療機関のネットワークの端末になります。そうなると一医療機関では解決できなかった多くの問題が、ネットワークによって解決できる事になります。以下に例としてネットワークで可能になりうるサービスをあげてみます。ただしこれらは実際にすぐ提供されるものではありません。

将来的にはネットワークセンターが日医、都道府県医師会、地区医師会に設置され、それぞれの医師会でのニーヅに応えた情報センターとなる予定です。

3.医師会主導である。
ORCAは従来のレセコンのように業界や厚労省の主導ではありません。われわれ医師や医師会が主導するものなのです。
経済財政諮問会議や総合規制改革会議の動きなどを見ると、医療を医療人の手から取り上げ、支払い側(保険者)・企業の側(株式会社)に持っていこうとしている感じが否めません。医療の効率だけを取り上げ、国民の医療のニーヅについては考慮がありません。

この様な状況の中、一方的に厚労省から出されたバイアスのかかったデータをもとに医療に関する政策決定されている現在のプロセスを改めるためにORCAが提供されるのです。ORCAは医療機関・医師会が医療の情報を握り国民のための医療を実践するためにあるのです。
この様に、ORCAは高い志を持ったものなのです。

終わりに
11月5日、鳥取県医師会のORCA協力業者である中国メディコムさんから我が家に一組のORCAが到着しました。何の変哲もない中程度のスペックの普通のパソコンです。起動するとかわいいシャチ(ORCA)のマークがでてきます。
でも喜び勇んで入力を続けるとすぐ止まってしまいました。現在は試験運用の段階で、我々のような試験運用協力医療機関が協力業者と伴に、使いにくい所や欠陥のあるところを指摘しあって改良する段階です。ですから毎週のようにバージョンアップが続いています。3月の本運用開始時にはきっとすばらしいものにできあがっているでしょう!皆様と楽しみに待ちたいと思います。
これからの医師・医療機関に求められるものとして、今まで通り臨床の技術に加えて、情報の検索能力とそれに基づいた説明責任の実践が医療機関生き残りの武器となります。そしてこれを支えるのがIT技術であり、国民のための医療を支えるツールとしてORCAが提供されるのです。
「ORCAによるIT武装は、私たちのプロフェッショナルフリーダムを守り、国民の医療を守るためのパワーになるのです。」