シンポジウム
−ORCAがもたらすもの−

米子市 中井医院 中井一仁


ORCAの誕生の背景
 レセプト用コンピューターシステム(診療所向け小規模医事会計システム、以下レセコンと略す)は日医の提案を受けて開発されたもので、その黎明期から普及期にかけて医療会計事務の省力化に大きな力を発揮してきた。しかしその後、メーカーなどの主導によって、情報交換の基盤が整備出来ず、その結果レセコン内の情報を共有できない状況になった。これでは地域での医療情報の共有や医療の効率化を進めることが出来ない。

ORCAの特徴
 ORCAは従来のレセコンとは異なる三つの大きな特徴を持っている。

  1. ネットワーク対応と情報交換の基盤整備
  2. オープンソース
  3. 医師会主導

1.ネットワーク対応と情報交換の基盤整備
 ORCAは情報交換の共通の基盤を提供する。これによって外部に向かっては医療機関同士を結び情報の共有を可能にする標準のネットワーク端末になりえ、内部に向かっては医療機関内ネットワークの計算・マスター管理・レセプト出力のサーバになる。
 この結果、将来的には様々なサービスが可能になり、質の高い医療を保証することが出来る。

2.オープンソース
 オープンソースとは「プログラムソースを明らかにする事であり、従ってスキルさえあればプログラムの内容を自由に見る事が出来る。また、いろんな機能を付加することを前提にした核となるソフトで、その中身を公開して付加や改造を可能としたものである。」などと定義されている。根底にある考え方は、反独占・反管理であり、言い換えれば「国家管理からの自由」を保証するものである。
 内部での情報処理プロセスが明らかであるため、不正やユーザーに不利益な事はできず、情報の透明性を確保する事が出来る。また一つのソフトウェア会社に依存しないため、その会社に囲い込まれたり、その会社と運命をともにすることがない。社会の公共財となる
 私たちがオープンソースプログラムを使う結果、以下のような結果を得ることが出来る。

3.医師会主導
 医師会が自力で医療現場の状況を把握・解析し、そのデータをもとに国民・住民のための医療政策を立案し、国民に提案していく事が出来る。また、民間が主体となったEBMのデータベースの作成ができる。診療GLの国家管理からの自由が保証される。

ORCAの現状と展望
1.ORCAの多様な展開について
 ベンダーによってさまざまなORCAが提供されるであろう。それぞれのベンダーが得意とする分野を取り込みカスタマイズされるであろう。2月末に予定されるオープンソース宣言でビジネスは自由になる。競争原理の働く環境となる。競争は値段だけでなく、そこで提供される環境によるはずである。

ベンダーはどこから利益を得るか?
ハードを売る×
レセコンソフトやマスターと改訂を売る×
オンラインコンテンツを売る
サポート・教育体制を売る
電子カルテなど付加的な環境を売る

2.レセ電算への対応
現在のレセプト情報処理システム(基金がゲートキーパーとなり中立を保証される)のままであれば、紙がデジタルに変わっても大きな変化は起きないであろう。問題は保険者が直接審査に乗り出した時点である。この場合は新たに「レセプトの審査・支払の公正さ」を保証するシステムの構築を提案しなければならない。

ORCAとは?
「国や保険者などの管理医療から国民のための医療を守るツールである。」