鳥取県医師会の情報化と医師会総合情報ネットワーク構想について

中井医院 中井一仁


1.鳥取県と鳥取県医師会 (概要)
2.鳥取県医師会情報化の歩み (過去)
3.鳥取県医師会情報化の課題 (未来)


僕たちの船
― 階層構造のジレンマ ―
(鳥取県医師会報第531号巻頭言より抜粋)
 僕たちは今、大きな情報化のうねりの中で「階層構造のジレンマ」に苦しんでいる。僕たちはいわば「同じ船に乗り合わせた仲間」であり、良いときも悪いときも同じ運命にある。そしてこの時代、情報化という羅針盤を積み損なった僕たちの船は、ネガティブキャンペーンの嵐の中で舵を失ったようにも見える。

 僕たちの組織は「日本医師会」「都道府県医師会」「地区医師会」「会員」という階層構造によって支えられてきた。末端からの情報は段階的に集約されて日医に伝えられた。日医からの情報は逆の道をたどりながら会員へ流布された。情報がアナログの時代、つまり「前」高度情報化時代においては、この組織は強い団結に支えられたまさに「鉄の組織」であった。

 現在、日医から会員への情報は日医会報で伝えられて二ヶ月、通知は県医師会報経由でも日医を出発して会員の手に渡るのには一ヶ月以上かかっている。逆向きはさらに多くの時間と手続きが必要である。しかもそれらの情報はデータベース化されていない。

 情報化へのキーワードは、データベース化された情報の公開と、その上に立った自由が保証された討議に基づく合意形成である。民主主義が全体主義に勝てるのは「公開された情報の上で成り立った市民の合意」があらゆる近代兵器よりも強いからである。

 高度情報化により社会がフラットになって行くにつれ、ある時点で医師会の階層構造は大きな壁にぶつかるであろう。それはわが国の多くの企業が、情報ネットワーク型にマッチした構造となっておらず、情報技術に合わせた組織のリエンジニアリングが求められている事に似ている。やがて21世紀の初頭に、僕たちは電子環境に合わせた組織作りを考えていかなければならないであろう。

 僕たちは今、「1人でも多くの仲間を乗せる沈まない船」を造る必要があるのだ!